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2026年2月2日

失われたキモさを求めて

福尾が初の新書を書き始める。「分かりやすくしてもらうほど原典が遠ざかる」という 入門書のジレンマと、大学の「アウトリーチ」という言葉への長年の嫌悪。 千葉雅也『勉強の哲学』の「勉強するとキモくなる」を軸に、 ノリに回収されないもがきのキモさについて。

放送日
2026年2月2日
長さ
1:16:21

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話の流れ

  1. 1:00初の新書を書く
    全く人文書を読んだことのない人でも読めるところまでいけるか。分かりやすい超解説にはしたくない。
  2. 2:10動物化するポストモダンは新書だった
    超平面性、可視的なもの、ラカン理論の謎の変形。あれを新書でやって10万部いっていた時代。
  3. 4:40入門書のジレンマ
    分かりやすくしてもらうほど原典が「私には近づけないもの」として遠ざかっていく。ドゥルーズもフーコーも読めますよ、というところまで持っていきたい。
  4. 5:50アウトリーチという言葉が嫌い
    専門知を社会に還元しましょう、というのは普通に権威主義だ。こっち側にリソースを確保しておいて、薄めたものをちょろちょろ配る。
  5. 7:00言語野が活性化してきた
    作品を作っているときは言語野がおろそかになる。THEATER Dの宣伝であちこちで喋っているうちに、また回るようになってきた。
  6. 9:10批評が頑張ってくれないと困る
    山口一郎の「音楽批評が大事」、市川沙央の「批評家は新人の作品を一個一個評論しろ」。作品を作る人は本当は批評を任せたいのだと思う。
  7. 12:30実作者の読み解きと外からの批評
    濱口・三宅の勉強会、小説家同士の谷崎読書会。作品の中で起きていることの面白さを大義名分でない形で言葉にする。それと、外側からの批評はどこか性質が違う。
  8. 19:10批評はステルス化する
    もっともらしい批評文を書くという形ではなく、インタビューをしたときのちゃんとした感じや、喋るときに思索の跡が見えてくることのほうへ。
  9. 23:20その場限りの用語法
    黒嵜想の話。お互いが自分の使ったことのない言葉を使い始めて、考えが変わっていくのを見ている人に見せられれば、それはもう批評だ。
  10. 36:00勉強するとキモくなる
    千葉雅也『勉強の哲学』。考察が流行りのものにリアルタイムでアクセスすることだとすれば、勉強は世のノリから外れてキモくなることを経由する。
  11. 39:00町山智浩再評価
    エンディングテーマの選曲の意図まで読み込んで、別の解釈を潰していく怖さ。10代のときは「キモい」と思ったが、人間それが必要なのではないか。
  12. 41:40エッセイ講座に出てきたおじさん
    パニック障害でかかりつけの薬剤師を好きになってしまう話、ガザの海岸で拾った石を10年越しに返しに行く話。いまのエッセイブームからは絶対に出てこない私性。
  13. 47:00内実が分からないとモンスター化する
    『ブラックボックス・ダイアリーズ』の捜査官A。世間から見ればキモいことで、当事者にとっては加害でしかない。でもそこに至る気持ちの内実も同じくらい見ていこうよ。
  14. 54:47Tinderで100人に日記を送る
    葉山莉子『Tinderレモンケーキエフェクト』。マッチした相手に日記を送ると、性的な対象ではなく「人生がある人間」として扱われ始める。やりもく除けになる。
  15. 57:05第三の道
    だがコピペで同時に100人へ送っているので、差し向かいのオーダーメイドなやり取りでもない。単純に性的に消費されるのでもなく、1対1でもない道が日記によって可能になっている。
  16. 1:00:00バカし合い込みのリアル
    真のコミュニケーションや心が通じ合う瞬間だけがリアルなのではなく、バカし合いも込みで全体としてリアルだという感じがする。
  17. 1:01:34カタコトに人格が宿る
    国際ロマンス詐欺の鍵はカタコトの日本語。そこに人格的なリアリティが宿るが、それは人工的に作られたものでもある。
  18. 1:03:00それぞれ勝手にやっているからやりとりが発生する
    「あなたの気持ちを教えてください」という同じ前提を作るためのコミュニケーションではなく、それぞれ勝手にやっているからこそやりとりが生まれる。そっちのモデルのほうがずっと気楽。
  19. 1:03:38心の交流と性のあいだのジャンプ
    『青野くんに触りたいから死にたい』は、深い人間的交流を経て尊い関係になった、では終わらず、最終的に「ただ触りたい」に戻る。分かり合ったからといって恋人になるわけではない。
  20. 1:06:22泣ける表現と泣けない表現
    どちらが偉いという話ではない。福尾の文章は涙を誘うものではないが、荘子itはソロで今まで言わなかったことを歌詞にすると自分でも涙が出てくる。

この回で出てきた言葉

この回で触れられた項目

この回からの引用

アウトリーチって大学の中でよく使われる言葉なんだけど、専門知を社会に還元しましょうみたいな。でもそれって普通に権威主義じゃんって、ずっと昔から思ってて。

アウトリーチという言葉が嫌い

全然世のノリから外れて、社会のノリから外れて、キモくなるってことを経由するっていうことなんですよっていう前提から出発してるのがいいよね。

勉強するとキモくなる

なんとかして答えにたどり着こうとしているときのもがきのキモさって、ノリには回収されないものだと思うんだよね。

勉強するとキモくなる

単純に性的に消費されるわけでもないし、じゃあ1対1でオーダーメイドのやり取りをしましょうっていうわけでもない。その第三の道みたいなものが、日記っていうものによって可能になってる。

それぞれ勝手にやっているからやりとりが発生する

本当の真のコミュニケーションとか、真の心が通じ合う瞬間がリアルみたいなとこに行っちゃうんじゃなくて、ある種バカし合い、そのバカし合い込みのリアルでしょみたいな感じがあるんだよな。

バカし合い込みのリアル

同じ前提を作りましょうっていう目的のコミュニケーションじゃなくて、それぞれ勝手にやってるからこそやりとりが発生するみたいな。そっちモデルの人間関係の方がずっと気楽だよなと思うんだよね。

それぞれ勝手にやっているからやりとりが発生する